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手打ち蕎麦の日替わりランチが1,350円。二八・挽きぐるみ「沼田産きたわせ」を食べてきた

2026年10月27日(火)/手打ち蕎麦 八起喜(やきき)/ランチレポート

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3行でわかるこの記事 
① 日替わりランチが1,350円。かき揚げ丼+蕎麦+小鉢+サラダ+デザート+コーヒー。
② 蕎麦は二八・挽きぐるみ、産地は沼田産きたわせ。黒板に書いてあった。
③ いまは新そばの季節。10月末のこの時期にしか食べられない香りだった。

蕎麦屋の看板

通りがかりで見つけた店だった。

木の切り株を半分に割った看板に、「手打ち蕎麦 八起喜」。読めそうで読めない字面に、少し惹かれた。藍色の暖簾、格子のフェンス、店の前に小さく置かれた植木。

派手さは一切ない。だが、「手打ち」と自分で書く店は、だいたい本気だ。

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手打ち蕎麦 八起喜(yakiki)の店構え

黒板に、産地と品種が書いてある

席に着いて、壁を見て少し驚いた。

ホワイトボードが2枚、吊るしてある。

左:「本日の日替わりランチ」 かき揚げ丼/蕎麦/小鉢/サラダ/デザート/コーヒー又はウーロン茶 ¥1,350-

右:「本日の蕎麦」 <二八・挽きぐるみ> 沼田産 きたわせ

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壁のホワイトボード。「本日の蕎麦 <二八・挽きぐるみ> 沼田産 きたわせ」

これが、この店の一番すごいところだと思う。

蕎麦屋はたくさんある。だが、「挽き方」と「産地」と「品種」まで黒板に書く店は、そう多くない。書くということは、毎日その粉を仕入れて、毎日打っているということだ。逃げ場がない。

しかも「本日の」と付いている。日によって変わる可能性がある、という宣言でもある。こういう店は、信用していい。

きたわせ、という品種

「きたわせ」を調べてみた。北海道で育成された蕎麦の代表品種で、北海道のそば作付面積のおよそ9割を占めるという(製粉会社の解説による)。

項目内容
品種名きたわせ(キタワセソバ)
育成北海道(夏そば=春蒔き型の代表種)
特長草丈が短く早熟・多収。形状・食味とも良好
立場北海道産そばの主力品種
沼田町空知管内。JA北いぶき(沼田町・秩父別)の産地

早熟で多収——つまり「作りやすい」。だから広がった。だが、作りやすい品種が美味しくないとは限らない。きたわせは香りと食感のバランスがいいと評されることが多く、プロの蕎麦打ちも土台としてよく使う。

そして沼田町は、そばの産地として名前が通る場所だ。空知の内陸、雪が深く、寒暖差が大きい。蕎麦には厳しい環境が、実はいい実を作る。

二八と挽きぐるみ

黒板の「二八・挽きぐるみ」を分解する。

言葉意味
二八そば粉8:つなぎ(小麦粉)2。香りと繋がりのバランス型
十割そば粉100%。繋がりにくいが、香りは最大
外二そば粉10に対してつなぎ2(=全体の約17%)。繋がり重視
挽きぐるみ玄蕎麦を殻ごと挽く。色は黒っぽく、香りと甘みが強い
更科実の中心だけ使う。白く、上品だが香りは控えめ

つまりこの日は、香りを取る挽き方(挽きぐるみ)に、繋がりを確保する配合(二八)を重ねた蕎麦。狙いがはっきりしている。

「十割で勝負」ではなく「二八で、香りは殻で出す」。作り手の判断が見える組み合わせだ。

実際に出てきたもの

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日替わりランチ1,350円。かき揚げ丼、ざる蕎麦、小鉢、サラダ、デザート、コーヒー付き

1,350円。

トレーの上は、思ったより賑やかだった。

  • かき揚げ丼(玉ねぎ・人参。揚げたて)
  • ざる蕎麦
  • そば猪口(刻みネギ入り)
  • 小鉢(かぼちゃサラダ、プチトマト、コーン、千切りキャベツ)
  • 漬物
  • ジュレ状の小鉢
  • デザート
  • コーヒー又はウーロン茶

これで1,350円は、安い。 蕎麦単品でも800〜1,000円する時代に、丼が付いて、デザートとコーヒーまで付く。しかも蕎麦は手打ちで、産地と品種を明記している。

蕎麦は細め。挽きぐるみらしい薄い茶色で、啜ると最初に香ばしさが来て、あとから甘みが残る。つゆは辛めで、蕎麦の香りを消さない程度の濃さ。この配分は、好みが分かれるところだが、私は好きだった。

かき揚げは衣が軽い。丼つゆは甘すぎず、蕎麦と交互に食べても喧嘩しない。セット全体が、一つの設計になっている。

蕎麦屋の「1,350円」を分解する

この値段がなぜ成立するのか、少し考えた。

項目一般的な相場この店
手打ちざる蕎麦 単品800〜1,200円セット内
かき揚げ丼 単品1,000〜1,300円セット内
デザート+コーヒー400〜600円セット内
合計相当2,200〜3,100円1,350円

単純に足せば2,000円超。それが1,350円で出てくる。

手打ちで、産地を書いて、この価格。 利益はどこから出ているのか。おそらく、回転と、素材の無駄の少なさだ。日替わり=その日仕入れたもので組む。ロスが出ない。メニューを絞るから、仕込みが速い。

「安い」ではなく「無駄を削いである」。 それが昼の定食の正解なのだと思う。

新そばの季節

10月の終わり。新そばの時期だ。

北海道の新蕎麦は、産地によって9月下旬から11月にかけて出回る。製粉会社の案内を見ると、2026年(R8年)産の新そばとして、沼田町を含む道内各地のきたわせが案内されている。

新そばの何が違うか。香りが立つ。 収穫から時間が経つと、蕎麦の香気成分は少しずつ抜ける。だから新そばは、挽きたて・打ちたて・茹でたての三つが揃った時に、別物になる。

この日の黒板に「本日の蕎麦」とあったのは、そういうことだ。今しか出せないものを、今出す。 蕎麦屋の誠実さは、メニューの書き方に出る。


蕎麦を家で楽しむなら

店の味を家で再現するのは難しい。だが、粉と道具を揃えれば、かなり近づける。

そば粉(北海道産きたわせ)

蕎麦打ち道具(のし板・麺棒・こね鉢)

めんつゆ・かえし

蕎麦猪口・ざる

北海道の新そばを取り寄せる

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まとめ

項目評価
価格1,350円でこの内容は驚き
蕎麦挽きぐるみの香り。細めで啜りやすい
産地表示品種・産地・挽き方まで明記
ボリューム丼+蕎麦+小鉢+デザート+飲み物
再訪あり。次は「本日の蕎麦」が変わる日を狙いたい

蕎麦屋は、黒板を見てから決めればいい。

産地と挽き方が書いてある店は、それだけで信頼できる。逆に、何も書いていない店は、何も隠していないか、何も選んでいないかだ。

この日は、前者だった。


店舗情報

手打ち蕎麦 八起喜(やきき/yakiki) 

北海道函館市松陰町31-13 プレジオ函館松陰町1F

函館市電・柏木町駅から徒歩約7分

駐車場あり 昼 11:00〜15:00(L.O.14:30)

※売り切れ次第終了 定休日 木曜

電話 0138-86-6446

2023年11月18日オープン

日替わりランチ 1,350円(かき揚げ丼・蕎麦・小鉢・サラダ・デザート・コーヒー又はウーロン茶) 本日の蕎麦:二八・挽きぐるみ/沼田産きたわせ ※価格・内容は2026年10月27日時点の店内掲示によるものです。日替わりのため内容は変わります。

※営業時間・定休日は店舗にご確認ください。

参考

  • 製粉会社各社の公開情報(きたわせの品種特性・北海道の作付割合)
  • 種苗会社の品種解説(キタワセソバの特性)
  • 製粉会社の新そば案内(2026年産・沼田町産きたわせ)